大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

岡山地方裁判所 平成元年(わ)721号 判決

主文

被告人を懲役一年及び罰金二二〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、岡山県井原市井原町四三番地の三において、片岡商店の名称で葬儀業及び仏壇仏具小売業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外して借名預金を設定するなどの不正な方法によりその所得を秘匿した上

第一  昭和六〇年分の実際の総所得金額は五、〇〇一万八、六八八円で、これに対する所得税額が二、二八二万四〇〇円であつたにもかかわらず、同六一年三月三日、岡山県笠岡市五番町五番四八号所在の所轄笠岡税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額は五二八万九、四八七円でこれに対する所得税額が五一万三、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税額定申告書を提出し、もつて不正の行為により、右正規の所得税額と右申告税額との差額二、二三〇万七、四〇〇円の所得税を免れ

第二  昭和六一年分の実際の総所得金額は五、一七九万五、八四六円で、これに対する所得税額が二、三六三万五、四〇〇円であつたにもかかわらず、同六二年二月二七日、前記笠岡税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額は六五一万四、〇三二円でこれに対する所得税額が七六万五、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、右正規の所得税額と右申告税額との差額二、二八六万九、七〇〇円の所得税を免れ

第三  昭和六二年分の実際の総所得金額は八、六七〇万六、三二一円で、これに対する所得税額が四、三三一万五、九〇〇円であつたにもかかわらず、同六三年二月二六日、前記笠岡税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額は九一一万五、四五二円でこれに対する所得税額が一三四万一、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、右正規の所得税額と右申告税額との差額四、一九七万四、六〇〇円の所得税を免れ

たものである。

(適用した罰状)

一  所得税法二三八条一項、二項

二  刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条一項、二項

三  刑法一八条

四  刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、片岡商店の名称で葬儀業及び仏壇仏具販売業を営んでいた被告人が、貧しかった昔の経験から自分達夫婦及び娘夫婦らの生活をゆとりあるものにするため、売上金の一部を除外したり、昭和六二年分については更に株式譲渡所得を全部除外したりして、所得を隠し、昭和六〇年分から昭和六二年分まで三年間合計八七一五万一七〇〇円もの多額の所得を免れたもので、脱税額が多く、かつ、所得税のほ脱率が昭和六〇年分が九七・七パーセント、昭和六一年分が九六・七パーセント、昭和六二年分が九六・九パーセントと極めて高い。

申告納税制度を採る租税制度のもとでは、国民が自己の所得を正直に申告することを前提としているから、不正の手段で所得を隠して税金を逃れることは、国民全体の犠牲において違反者のみが不法の利益を得るもので、極めて反社会性の強い犯罪である。税負担の公平は租税制度上最も重視すべき原則であり、この原則を保つためにも、正直者が馬鹿をみることがあつてはならない。

他方、本件の犯行手口は単純であること、被告人は、脱税した三年分について修正申告をしたうえ、本税及び加算税を全部納付ずみであること、被告人は、本件を反省し、本件後、片岡商店を株式会社カタオカとして、その経営を娘婿に委ねたことなど酌むべき情状も存する。

よつて、主文のとおり量刑した。

(裁判官 角田進)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!